文化祭の模擬店は、もっと「お金の授業」にできる
#009
文化祭の振り返りが、化粧やスカート丈の話だけで終わるのは、少しもったいないと思っています。
もちろん、安全面の確認は必要です。
騒ぎすぎてけがにつながるような場面があれば、学校としてきちんと見ていかなければいけません。
ただ、文化祭にはもうひとつ大きな学びがあります。
それは「お金」です。
生徒指導部会で感じたこと
先日、たまたま生徒指導部会に出席することになりました。
私は生徒指導部の担当ではありません。
ただ、担当の先生が不在だったため、2学年の代表として会議に出ることになりました。
その中で、文化祭の振り返りも行われました。
各学年から出ていた話は、化粧が濃い、スカートが短い、騒ぎすぎている、という内容が中心でした。
それも学校としては大切な視点です。
でも、私はそこにはあまり触れませんでした。
私が話したのは、3年生の模擬店についてです。
勤務校では、文化祭で3年生が模擬店を出します。
たこ焼き、綿菓子、焼き鳥などを売ります。
生徒にとっては、楽しみな出し物のひとつです。
でも見方を変えると、これは小さな商売の経験でもあります。
何を売るのか。
いくらで売るのか。
どれくらい仕入れるのか。
当日、どうやって売るのか。
売れ残ったらどうするのか。
足りなかったらどうするのか。
ここには、社会に出てから必要になる感覚がかなり詰まっています。
前売り金券は、かなり大事なデータになる
特に大事なのが、前売り金券です。
勤務校では、文化祭の1週間ほど前に金券販売があります。
生徒は上限1,000円まで金券を買うことができます。
毎年、長い列ができます。
この時点で、すでに「どれくらい買われそうか」が見え始めています。
聞いたところでは、過去にはだいたい40万円分ほどの金券が売れていたそうです。
3年生は5クラスあります。
単純に割ると、1クラスあたり8万円分の売上が見込める計算になります。
これは、かなり使える数字です。
平均を狙うなら、各クラス8万円分を売り切る計画を立てればよい。
少し強気でいくなら、10万円分の売上を目指して仕入れ量を考えることもできます。
でも現状では、この数字が十分に使われていません。
そもそも、40万円という数字も数年前のものです。
毎年きちんと記録していけば、文化祭の模擬店でどれくらいのお金が動くのかが見えてきます。
それが見えれば、仕入れ量も決めやすくなります。
これは、生徒にとっても先生にとっても大きいです。
売り切れは、本当に成功なのか
私自身、以前3年生の担任をしていたとき、この見通しがありませんでした。
どれくらい売れるのか分からなかったので、だいたい4万円分くらいの材料しか仕入れませんでした。
結果、昼前には売り切れてしまいました。
一見すると、売り切れたので成功に見えます。
でも、買いたい生徒がまだいたのに買えなかったのなら、それは成功とは言い切れません。
売れるはずだった分を、逃しているからです。
金券を持っている生徒がいる。
買いたい気持ちもある。
でも、商品がない。
そうなると、生徒は金券を使い切れません。
使われなかった金券は、あとで返金されます。
つまり、本来なら生徒会に入ったかもしれないお金が、戻っていくことになります。
もちろん、お金を集めればよいという話ではありません。
文化祭は教育活動です。
利益だけを追う場ではありません。
ただ、お金の流れを考えることも、立派な学びです。
生徒の財布から、前売り金券として1,000円が出る。
でも、その時点ではまだ生徒会のお金になっていません。
当日、その金券で買い物をしてはじめて、生徒会の収入になります。
半分しか使われなければ、残りは返金されます。
この流れを生徒が理解するだけでも、かなり勉強になります。
文化祭は、商売の入り口になる
需要があるのに商品が足りなければ、売上は伸びません。
商品を作りすぎれば、余ってしまいます。
価格設定を間違えれば、売れにくくなります。
販売の声かけが弱ければ、せっかくの商品も見向きもされません。
これは、教科書だけではなかなか学べないことです。
文化祭、体育大会、修学旅行、球技大会。
学校にはいろいろな行事があります。
その中で、実際にお金が動く行事は限られています。
特に3年生の模擬店は、生徒が商売の入り口を体験できる貴重な機会です。
最近は、生徒数の減少もあります。
生徒会費の減少も、これからさらに問題になっていくと思います。
だからこそ、文化祭の模擬店をただの出し物で終わらせるのは、もったいないです。
前売り金券の販売額を毎年記録する。
その金額から、全体でどれくらい売れそうかを考える。
各クラスで目標売上を決める。
目標から逆算して、仕入れ量を決める。
当日は、どうすれば楽しんで買ってもらえるかを考える。
ここまでやれば、文化祭はかなり実践的な学びになります。
生徒指導は、ルールを守らせるだけではない
生徒指導というと、どうしてもルールを守らせる方向に寄りがちです。
服装、頭髪、化粧、行動。
もちろん、それも必要です。
ただ、文化祭の振り返りが、髪型をどうするか、化粧をどう指導するか、という話に寄りすぎてしまうのはもったいないとも思います。
生徒指導部が考えるべきことは、注意することだけではないはずです。
文化祭を、マーケティングやお金の流れを考える機会として見直すこともできます。
マーケティングというと少し難しく聞こえますが、要するに「誰が何をほしがっているのか」「どうすれば気持ちよく買ってもらえるのか」を考えることです。
これは、生徒がこれから生きていくうえでかなり大事な力です。
どの商品がよく売れたのか。
なぜ売れたのか。
売れ残った商品は、何が原因だったのか。
前売り金券はどれくらい売れて、当日はどれくらい使われたのか。
そうしたことを振り返れば、来年度以降の文化祭をよりよくするための改善策も見えてきます。
でも生徒指導は本来、生徒が社会の中でよりよく生きていくための指導でもあるはずです。
そう考えると、お金の流れを見せることも、生徒指導のひとつだと思います。
文化祭の模擬店は、もっとお金の授業にできます。
もっとデータの授業にできます。
もっと社会を見る授業にできます。
来年の文化祭では、前売り金券の販売額を見ながら、各クラスが自分たちで販売計画を立てるところから始められたら面白いと思っています。
売り切れたら終わり。
楽しかったら終わり。
それだけでは、少しもったいないです。
せっかくなら、生徒たちにこう考えてほしいです。
どれくらいの人が買いたいと思っているのか。
その人たちに、どう届けるのか。
売上を上げるには、何を変えればよいのか。
余らせず、足りなくもせず、ちょうどよく売るにはどうすればよいのか。
文化祭は、そこまで学べる行事です。
学校行事の中には、まだまだ眠っている学びがあります。
私は、そういう学びをもっと拾っていきたいです。
みなさんの学校では、文化祭の模擬店をどのように振り返っていますか。
服装や安全面だけでなく、お金やデータの視点で見たら、何が見えてくるでしょうか。
ぜひ、みなさんの意見も聞かせてください。
それではまた。






本校はお金の扱いが禁止されています。そのためクラスごとの教室展示もしくは体育館でダンスという文化祭です。近年だとキッチンカーを呼ぶことが流行りのようですが、それもNG。
販売活動ができること羨ましいです。販売を通して準備、原価計算、当日販売、片付けと学びの観点で見れば多くの価値がありますね。文化祭をきっかけに関連する職業に興味を持ってもらえるとより良いですね。