小学校火災を「非常識な先生」で終わらせていいのか
#010
教師は、なぜ学校で洗濯物を干していたのでしょうか。
東京・北区の区立小学校で起きた火災の報道を読みながら、私はこの問いが頭から離れませんでした。
まず大前提として、火災につながりうる行為は正当化できません。
学校は、子どもの命を預かる場所です。
安全管理は厳しく見直されるべきです。
けがをされた児童、先生方の回復を心から願っています。
そのうえで、考えたいことがあります。
このニュースを、「非常識な先生がいた」で終わらせていいのでしょうか。
私は、そこに強い違和感があります。
責任の話は、曖昧にしてはいけない
報道によると、2026年6月19日、東京・北区の滝野川第三小学校で火災があり、音楽準備室や音楽室など約200平方メートルが焼け、児童を含む11人がけがをしました。
また、学校側の説明として、音楽担当の女性教諭が当日の朝に家庭科室で私服を洗い、火元とみられる音楽準備室で干していたことも報じられています。
音楽準備室には、私物のサーキュレーター、電気ストーブ、電源タップ、ハンガーなどがあったとも報じられています。
警視庁は、この教諭から任意で事情を聴き、失火容疑で捜査を進めているとのことです。
ただし、現時点では、火災の原因が最終的に特定されたわけではありません。
だからこそ、ここは雑に断定してはいけないと思います。
同時に、危険な状態があった可能性についても、曖昧にしてはいけません。
ストーブの近くに燃えやすいものを置くことは危険です。
学校で私物を保管し、洗濯し、乾かしていたことについても、学校側は服務上適切ではなかったと説明しています。
責任の所在。
安全管理の不備。
学校としてのチェック体制。
これらは、厳しく問われるべきです。
私も教師として、この点をごまかすつもりはありません。
それでも、個人の非常識だけで終わらせたくない
ただ、そのうえでやはり考えてしまいます。
なぜ、教師が学校で私服を洗っていたのか。
なぜ、学校で乾かしていたのか。
なぜ、私物がそこまで持ち込まれていたのか。
もちろん、この教諭個人の事情はまだ分かりません。
どのくらい忙しかったのか。
家庭にどんな事情があったのか。
職場でどのような働き方をしていたのか。
外から断定することはできません。
でも、ひとつだけ言えることがあります。
学校という職場では、仕事と生活の境界が壊れやすい。
ここは、もっと見られていいと思います。
教師は、授業だけをしているわけではありません。
授業準備。
採点。
提出物の確認。
保護者対応。
事務作業。
行事。
会議。
校務分掌。
生徒指導。
部活動。
地域対応。
学校には、あまりにも多くの仕事が積み上がっています。
しかも、その多くは「子どものため」という言葉で残り続けます。
この言葉は強いです。
強いからこそ、業務を減らす判断が難しくなります。
これも必要。
あれも子どものため。
昔からやっている。
保護者が求めている。
地域との関係がある。
そうやって、仕事は減らないまま積み上がっていきます。
数字で見ても、学校には余白が少ない
文部科学省の[令和4年度 教員勤務実態調査](https://www.mext.go.jp/content/20240404-mxt_zaimu01-100003067-1.pdf)では、10月・11月の平日における教諭の1日あたりの在校等時間は、小学校で10時間45分、中学校で11時間1分でした。
また、文部科学省が公表している[TALIS2024の資料](https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/20251006-ope_dev02-2.pdf)でも、日本の常勤教員の1週間あたりの仕事時間は、小学校で52.1時間、中学校で55.1時間とされています。
前回よりは減っています。
それでも、参加国の中では最長です。
これは重い数字です。
そして、現場にいる感覚としても、大げさな数字ではありません。
教師の仕事は、学校にいる時間だけでは終わりません。
家に帰ってから授業のことを考える。
テストを作る。
教材を準備する。
生徒のことを考える。
保護者対応のことが頭から離れない。
行事や部活動の段取りを考える。
本来、仕事とプライベートは切り分けられるべきです。
でも、現実にはその境界がとても曖昧になっています。
今回の火災を、教師の多忙だけで説明することはできません。
それは雑です。
でも、学校という職場の余白のなさを見ないまま、個人の非常識だけで終わらせるのも雑です。
必要なのは、二つを同時に見ることです。
事故の責任と安全管理は、きちんと検証する。
そのうえで、教師がまともに生活できる働き方になっているのかも検証する。
この二つは、矛盾しません。
むしろ、同じ問題の両面だと思います。
余白のない職場では、危険への感度が落ちる
余白のない職場では、判断が雑になります。
人は疲れていると、危険への感度が落ちます。
これくらいなら大丈夫だろう。
少しだけなら問題ないだろう。
今まで大丈夫だったから大丈夫だろう。
そういう判断が入り込みます。
学校のように子どもがいる場所では、その小さな判断が大きな事故につながります。
だからこそ、教師を守ることは、子どもを守ることでもあります。
教師に余白を作ることは、教育の質を上げるだけではありません。
安全にも直結します。
今回の件で問われるべきなのは、個人の責任だけではありません。
学校の中に、危険を見つけて止められる仕組みがあったのか。
私物の持ち込みや保管を、どのように確認していたのか。
使っていないはずの電気機器が、どのように置かれていたのか。
教室や準備室が、誰か一人の管理に任されすぎていなかったか。
そういうことも、見直される必要があります。
学校の仕事を、本気で仕分ける
では、何を変えるべきなのでしょうか。
まず必要なのは、学校の仕事を本気で仕分けることです。
教師が本当に担うべき仕事。
学校で抱え続けなくてもよい仕事。
この二つを分ける必要があります。
行事。
書類。
会議。
慣例。
地域対応。
保護者対応。
もちろん、すべてをなくせばいいという話ではありません。
必要な行事もあります。
必要な書類もあります。
必要な会議もあります。
保護者対応も、教育にとって大事です。
ただ、「昔からやっているから」「念のため」「誰かに何か言われるかもしれないから」という理由だけで残っている仕事は、本当に多いです。
ひとつひとつは小さく見えます。
でも、積み上がると教師の生活を削ります。
生活を削られた教師が、余裕のない状態で子どもの前に立つ。
これは、教育にとっても、安全にとってもよくありません。
次に、教師でなくてもできる仕事を外に出すことです。
事務。
清掃。
印刷。
備品管理。
会計処理。
こうした仕事まで教師が抱え込むと、教師は専門職ではなく、何でも屋になってしまいます。
教師は、授業をし、子どもと向き合い、教育に集中するためにいます。
学校という場所には、さまざまな仕事があります。
でも、それをすべて教師が背負う必要はありません。
教師も、学校に住んでいるわけではない
勤務体系そのものも見直すべきです。
教師が仕事とプライベートを切り分けられるようにする。
これは特別な要求ではありません。
本来、どの職場でも当たり前のことです。
家で洗濯をする。
家で食事をする。
家族と過ごす。
眠る。
休む。
そういう普通の生活が、教師にも保障されるべきです。
そんな当たり前のことが、教育現場で守られるようになってほしいです。
保護者や地域も問われています。
学校に求めすぎていないか。
教師に完璧を期待しすぎていないか。
昔からやっているという理由だけで、誰かの時間を奪い続けていないか。
学校は便利屋ではありません。
教師も、学校に住んでいるわけではありません。
一人の生活者です。
家族があり、暮らしがあり、休息が必要な人間です。
怒りだけで消費したくない
今回の事故は、本当に痛ましいものです。
だからこそ、怒りだけで消費したくありません。
けがをした児童や先生方の回復を願いながら、同時に考えたいです。
学校は、子どもにとって安全な場所であるべきです。
そして、教師にとっても、人間らしく働ける場所であるべきです。
この二つを両立できない教育現場なら、どこかでまた無理が出ます。
責めるだけでは、たぶん変わりません。
でも、問い続ければ変えられるかもしれません。
教師は、家で洗濯もできないほど忙しいのでしょうか。
もしそうだとしたら、それは個人の問題だけではありません。
社会の設計ミスです。
今回の火災は、決して許されるものではありません。
けれど、その背景にある学校の働き方も見過ごしてはいけない。
この二つを同時に考えることが、いま必要なのだと思います。
あなたは、このニュースをどう受け止めましたか。
先生個人の問題だと思いますか。
それとも、学校という職場の限界が出ていると思いますか。
よければ返信で教えてください。
このニュースを、誰かを叩く材料ではなく、学校の働き方を考えるきっかけにしたいです。
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それではまた。
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参考にした報道・資料
- [東京都北区「滝野川第三小学校における火災(第2報)」](https://www.city.kita.lg.jp/city-information/pr/1026227/1026203.html)
- [TBS NEWS DIG「家庭科室で洗濯した私服を火元の音楽準備室で乾かしていた」](https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2777159)
- [テレビ朝日「小学校の火事で女性教師“洗濯物乾かしていた”」](https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000514405.html)
- [文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)集計【確定値】」](https://www.mext.go.jp/content/20240404-mxt_zaimu01-100003067-1.pdf)
- [文部科学省「OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2024報告書のポイント」](https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/20251006-ope_dev02-2.pdf)





