「何度言っても変わらない」が、仕組みひとつで変わった話
#004
教室のゴミ箱の話をさせてください。
私の学校では、各教室に「燃えるゴミ用」と「ペットボトル用」のゴミ箱があります。
ペットボトルを捨てるときは、ラベルを剥がしてキャップを外す。
その2つは燃えるゴミへ。ボトル本体だけをペットボトル用のゴミ箱へ。
これを守らないと、掃除担当の生徒が自販機横のゴミ箱に移すとき、
誰が飲んだかわからないペットボトルのキャップやラベルを一本ずつ剥がすことになります。
自分のものでもないペットボトルに触って処理するのは、率直に言って気持ちのいい作業ではありません。
何度言っても、変わらない
私はこのルールを何度もクラスに伝えてきました。
でもゴミ箱を覗くと、キャップもラベルもついたままのペットボトルが並んでいます。
正直、少し諦めの気持ちがありました。
「ちゃんと聞いていないのかな」と思ったこともあります。
でも、冷静に考えると生徒が悪いわけではないと思います。
人は忙しいとき、急いでいるとき、つい「いつもの動作」で済ませてしまいます。
飲み終わったペットボトルを、何も考えずにゴミ箱に入れる。それだけのことです。
問題は生徒の意識ではなく、
「何も考えなくても正しく捨てられる環境」がなかったことだと気づきました。
職場でも家庭でも、
「何度言っても変わらない」という経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
もしかしたら、変わらないのは相手ではなく、環境のほうかもしれません。
「言う」のをやめて、「環境」を変えた
そこで私は、伝え方ではなく環境そのものを変えることにしました。
まず、ゴミ箱に段ボールで蓋を作りました。
蓋があると無意識にポイっと投げ入れられません。
捨てるとき、一瞬手が止まります。
この「一瞬の間」が大事だと思いました。
次に、蓋の上に啓発ポスターを貼りました。
手順をイラストで示したもので、nano bananaというAIの画像生成ツールで作りました。
文字だけの注意書きではなく、視覚的にパッと見てわかるものにしたかったからです。
ポスターの隅には「ご協力ありがとうございました」とニコちゃんマークも添えました。
命令ではなく、感謝から入る。ここは意識したポイントです。
「捨てるな」と言われるより、「ありがとう」と言われるほうが、
人は自然と協力したくなるものだと思います。
最後に、キャップとラベルが外された状態のペットボトルを2、3本、わざとゴミ箱に入れておきました。
「こう捨ててほしい」という見本です。
人は「正解の形」が目の前にあると、自然とそれに合わせようとします。
結果はすぐに出た
ゴミ箱の中のペットボトルは、ほぼ全てラベルもキャップも外された状態になりました。
掃除担当の生徒の手間が、なくなりました。
掃除の時間に教室を見に行ったとき、担当の生徒が言っていました。
「先生、今日めっちゃ楽でした」と。
その一言を聞いたとき、仕組みを変えてよかったと素直に思いました。
次の週のホームルームで、このことをクラス全員に報告しました。
掃除が楽になったこと。それはみんなの協力の結果だということ。
自分が掃除担当になったときに余計な苦労をしなくて済む、
それはお互いの思いやりです、と伝えました。
報告したとき、教室の空気が少しだけ柔らかくなった気がしました。
「自分たちの協力で、誰かの負担が減った」という実感は、
小さなことでもクラスの一体感につながるのかもしれません。
成功体験は、共有する
さらに、この取り組みを教員だけが見られるTeamsのチャンネルにも投稿しました。
AIで作ったポスターも添付して、他の先生がそのまま使えるようにしました。
ペットボトルのゴミ箱に限らず、同じような「言っても変わらない」に悩んでいる担任は、きっと他にもいます。
自分のクラスでうまくいったことは、自分だけで終わらせるのではなく共有する。
共有するときも、成功談だけでなく「そのまま使える素材」を添えておく。
そうすることで、受け取った側の手間も減ります。
自分がうまくいった方法を共有する。
たったこれだけのことで、職場全体が少しずつ良くなる可能性があると思っています。
人を変えるのではなく、環境を設計する
振り返ると、私がやったことは「もっと強く伝える」ことではありませんでした。
蓋で手を止めさせる。イラストで手順を見せる。
見本を置く。感謝を先に伝える。
どれも「もう一回言う」以外のアプローチです。
人に「変わってほしい」と何度言っても、なかなか変わりません。
でも環境を少し設計し直すだけで、人は自然と動いてくれることがあります。
職場のルールが守られないとき。家庭で片付けが進まないとき。
「言い方を変える」前に、「仕組みを変えられないか」と考えてみる。
その視点を持つだけで、状況が少しずつ変わることがあります。
私はこのやり方でうまくいきました。
もしよかったら試してみてください。
それではまた。






精神論ではなく仕組み化の実体験。参考になります😌
おもしろー!そのまま捨ててるペットボトルがあったら、あとに続く人もそのまま捨てそうですもんね。いちど動作をとめさせる、しかも不快にさせないよう配慮、すごい発明だなぁーと思いました